上手工作所の商品とその後のストーリー。
納品したアイテムの経年による魅力をお伝えしたいとその後を取材、
オーナーの思いなどを交えてお話を聞かせていただきます。
上手工作所から車で15分ほどの場所にある「しまざき助産院」。
妙見山の麓、兵庫県川西市黒川に位置し自然豊かな里山で、
妊婦さんの持っている力を最大限に発揮できるお産を目指して、運営されています。
2022年にテーブルを納品させて頂き、約2年が経過。
その後、看板などもオーダー頂いています。
「日本一の里山」と称される川西市黒川地区。
日本全国で放置林となった里山が増え続けている現在も、人々の手によって森林が保たれ
持続可能な循環型環境整備が生き残っている地域です。
のどかな風景が広がる場所に「しまざき助産院」はありました。
入口にはポプラの木を使った看板がお出迎え。
看板は4か月ほど前に納品させていただいたもの。
まだまだ、経年をお伝えするほどの時間が経っていませんが
有機的な形が里山の風景になじんでいました。
「なんだか子供のようなシルエットにも見える形は、助産院さんにふさわしいな~。」と製作担当者が思ったほど。
ここで産まれるたくさんの新しい命と共に
看板も一緒に時を刻んでいくのが楽しみです。
そして、助産院を運営されているのは島崎明代さん。
あるがまま、自然体であることを大切にされている島崎さんのお話は上手工作所のものづくりとも共通する部分が多かったです。
現在、一般的とされている医療機関でのお産の在り方について疑問を持ち、
理想的なお産について情熱的に語ってくださる内容は大変興味深いものでした。

妊婦健診やお産のための個人部屋として増設された建物内。
玄関から入ってすぐの場所にあったのは上手工作所のキハダの一枚板テーブル。
そのテーブルを囲んでお話をうかがいました。
サイズは幅2600㎜、奥行600㎜。
食事をするための一般的なテーブルと比べて、奥行が浅めですがお話をしていても自然と距離が近くなるようなサイズ感でした。
-納品から約2年半が経過とのことですが、色味が落ち着き、いい風合いになっていますね!
どういった使い方をされていますか?
島崎さん 購入してから、そのままにしていてお手入れは何もしていないんです。
ここは、お母さんが健診を受けている間にご家族の方が利用される場所で、小さなお子さんがおもちゃを出して遊んだりして過ごしていますね。
飲み物などのこぼし後のシミ
茶褐色に変化したキハダが渋い色合いに
子供たちの落書き
悪目立ちすることなくなじんでいます
-無垢天板は輪ジミなどを気にされる方が多いのですが、気にせずラフに使っていただきたい。
良い味わいになることをお伝えしたいので、とてもいい見本になります。
-素材選びで大切にされていることは何ですか?
島崎さん 赤ちゃんってとても敏感で、香料の入った洗剤なんかもとても刺激が強いですよね。
そういうものはなるべく避けるようにしていて、食べ物や建物、身の回りのものはなるべく自然のものを選ぶようにしていているんです。
「身体に良くないものは使わない」というコンセプトの「無添加住宅」というハウスメーカーで建てました。
12年前に建てられた、隣接するご自宅兼助産院
時間を経て、魅力が増す建具や外壁の素材
-助産院をはじめられたきっかけは何ですか?
島崎さん もともと看護師をしていたんですが
自分の出産の時に、病院でのお産に違和感を感じて。
それから助産師の資格を取り、その後も病院で12年ほど勤務した後に
助産院を開業することになったんです。
統計をとっても平日の出産が多くて、土日は少ないんです。
病院では陣痛の誘発剤などを使って日程をコントロールすることもありますし、
時間帯もお昼が一番多かったりするんです。
産む女性として、まるで手術室のような分娩台での姿勢はつらいですよね。
2人目を出産する時に、助産院さんを通じて自宅で出産をすることになり
助産師さんが自宅に来てくださったんですが、こんなお産があったのか!と衝撃を受けたんです。
陣痛の痛みも全くないし、その後の経過も1人目の出産の時よりもとてもラクだったんです。
出産ってこんなにも、日常の生活の中に自然とあるものだったのかと
周りの親戚も、全く心配してくれないくらい元気だったんですよ。
助産院とは?
病院や産科クリニックと同様に出産施設であるが、医師がいないため、医療行為を伴う出産は不可能。
緊急時には医療機関と連携して、ケアを行う。
助産院は、医療に頼りすぎることなく、お母さんと赤ちゃんが持つ自然の力を最大限発揮できるようなお産を
目指したケアやサービスが特徴。アットホームでリラックスでき、産前産後のサポートが充実していることが多い。

-ご自身の経験からだったのですね。
病院と助産院ではどんな違いがありますか?
島崎さん 助産院でのお産は自宅に近いような環境なので、落ち着いた状態でいられますよね。
陣痛を起こすオキシトシンはリラックスすると出やすくなります。
そして、リラックスするとβエンドルフィンが出て陣痛の痛みを和らげます。
だから、スムーズに進んでお産がラクになるんですよ。
2年ほど前に、学会の方から要請を受けて、ここで出産された方100人にアンケートをとったんですが
出産の時に「気持ちよかった」と答えた方が58人もいて
それには私もびっくりしました。
オキシトシンは医療機関のお産では陣痛誘発剤として、点滴で使用されることもあります。
本来は体から自然に分泌されるホルモンで子宮の収縮により分娩が進行し、出産後は子宮の回復を促す作用があります。
脳から分泌されるもので、『幸せホルモン』や『愛情ホルモン』とも呼ばれています。
出産時にはオキシトシンカクテルと呼ばれるくらい、大量に出てくるんですよ。
病院では点滴での他に内服したりもするんですが、これは不自然ですよね。
自分の脳から分泌することをさぼってしまう。
他にも違和感を感じるのは
病院では自分で産んだ子供とすぐには対面できない。
ガラスごしで見るだけで、赤ちゃんに会えるのは時間が経ってから。
自分が産んだ子なのに、何でって?思ったんです。
助産院では赤ちゃんが生まれたらお母さんの胸の上へ。
生まれてからお母さんと赤ちゃんを離さないことが愛着形成のために大切なことなんです。
早い時期からの赤ちゃんとの触れ合いでオキシトシンという愛情ホルモンをたくさん出すことが、その後の育児に良い影響を与えるんです。
-どんなことを大切にされていますか?
島崎さん 妊婦さんには、体重や食事のことなど、細かい指導をするのでなく、
赤ちゃんのためにいいと思う方法を自主的に考えながら
日々の生活を過ごしてもらうようにしています。
お産も何も考えなくても本能でできるんです。
抱き方を教えてもらう。とかお風呂に入れる。ことも本能でできるんですよ。
大事なところだけ伝えて見守っていてあげようという関わり方で
言いすぎない、余計なことはしない、シンプルが一番です。
-なるほどですね。
上手工作所でも、何かで塗り固めて一時的にキレイになることはしたくない。
余計なことをせず、削ぎ落していくものづくりの考え方と重なる部分があります。

あとは日常の体づくりが大切で
体を温めることや動かすことが大切だということは伝えています。
子宮は筋肉の収縮だから内臓の筋肉を鍛えるには歩くことが大切。
近くの山を登ったり、初産婦さんには毎日2時間歩いてもらうようにしています。
「これだけやったんだから。」と歩くことで自信にもなりますね。
-お産は予測ができないから、大変なお仕事ですね。
島崎さん そうですね。
お産は待ったなしの毎日ですが、
それを楽しんで生きています。きっと天職なのだと思います。
先のことを心配しすぎている方が多いなと思います。
考えすぎて、悩んでいますよね。
私はその時その時を楽しむようにしています。
子供の時ってそうでしたよね。
ここは、いろんな方に手伝ってもらっています。
働いているスタッフも、この助産院で出産を経験した方が多くて、
助産院の思いに共感する人々との繋がりの輪が、
13年の時を経て少しずつ成長しています。
これからも皆様とともに成長を続けていきたいです。
そして、助産院をもっとたくさんの人に知ってもらえたらいいなと思っています。
-島崎さん、ありがとうございました。
「自然の力を引き出す」とうことは、生活の中のいろんなことにつながりますね。
もっとお話を聞いていたいほど、興味深い内容でした。
フォトギャラリーと上手工作所のアイテム紹介

朝には鳥が時々遊びに来るという、テラスに設置された、上手工作所 神代杉のテーブル。
素材そのものを活かした個性的なテーブルですが、開放的な空間と調和しています。
神代とは、約1000年~2000年もの間、腐らずに土や川の中に埋まって、
地中の成分などの作用によって変色した木のこと。
時をかけるロマンのある天板です。
灰色がかった色味が明るいブラウンに。
納品から4ケ月経過
これからも経年変化が楽しみです。
雨ざらしの屋外で風合いが増したFB曲げハンドル(鉄)

これからの経年が楽しみなポプラの無垢看板

茶褐色に変化したキハダのテーブル

ナラのテレビボード

ピクトサイン トイレ(鉄)
しまざき助産院
妙見山の麓にある助産院。
自然がいっぱいの里山で、妊婦さんの持っている力を最大限に発揮できるお産を目指して運営。
妊娠、出産、産後と継続した充分なケア。その人に寄り添った自然な出産ができ、スムーズな育児につながるようサポートをされています。
上手工作所から車で15分。
ここでの出産を経験した上手工作所スタッフもおり、「あの経験が素晴らしかったから、もう一度しまざきさんで出産をしたい。」と語るほど、
心のこもったアットホームなケアをされています。
兵庫県川西市黒川字寺垣内232
HP:https://shimazakijyosan.sakura.ne.jp