オリジナル家具・金物の上手工作所

ギャラリーと打ち合わせスペースを兼ねた建物は、
日差しが気持ちよく入り、開放感に包まれたスペース。
高さ2400mmの突板が並ぶ光景は圧巻です。

こちらで社長の安多茂一さんにお話を伺いました。

ーこちらにある突板は個性的なものばかりですね。

安多社長:
一般的に建材や家具に使われている突板はキレイなんです。
木目がスーっと伸びてキレイに並んでいてクセがない。
そういうものはクレームが無くて無難なんです。

でもそれは魚で言えば、マグロを1匹釣ってきて大トロの部分だけを料理してるんですよ。
マグロは大トロだけじゃない、中トロや赤身もありますよね。
木も同じです。キレイな部分だけじゃなくて節やコブが合ったり、クセがある部分もある。

素材をどう活かすか、どう調理すれば残さず美味しく食べられるのか、料理をしている感覚ですね。

安多社長
安多社長

杢目

木のストーリーも大切です。
「ボグオーク」という、湖に何千年も沈んでいたオークの木があります。
日本にも「神代杉(じんだいすぎ)」や「神代欅(じんだいけやき)」などと呼ばれる埋もれ木がありますね。
ここにあるのはディズニーランドのお城のモデルになった、ドイツのノイシュバンシュタイン城の池に6000年ほど眠っていたものなんです。
すごいストーリーがありますよね。
ストーリーを気に入ってくれると、大事にして長く使ってもらえますし、所有していること自体が喜びにもなります。


例:ボグオーク

ー実際に山に入って木を切ってこられることもあると伺いました。

安多社長:
そこからやりたいんですよ。
自分たちで選んだ木を自分たちで切ってきて、最後まで調理したい。
「これどうしよう?」と、みんなで悩んだクセがある木ほど、良い仕上がりになると嬉しいし達成感があります。
よく「サステナブルですね」と言われますけど、変な木が美しいと思うから使うんです。


画像提供:安多化粧合板


画像提供:安多化粧合板

安多社長:
お客様にヒアリングしてから作っていくので、お客様の顔が見えている。
誰のもとに届けるのかが分かっていて作れるのは、作り手には幸せなことです。
というわけで、量産はしないんです。

お客さんと話をする中で、
どんな風景が欲しいのか、
どんなストーリーが欲しいのか、
その人が心の中に持っているどんな原風景が見たいのか。
そんなことを組み合わせてオリジナルパネルを作っていきます。
とても大変ですけど、作り手も楽しいですね。

ー近年は海外の展示会に出展されていますが、日本の展示会と違いはありますか?

安多社長:
今年初めて出展したオランダの「Dutch Design Week」は、
デザイナーが社会のためにどんなことができるのかをテーマにしたデザイン展です。
倍率は非常に高いそうなんですが、縁があって出展できることになりました。

そこではとにかくメッセージ性が求められます。
例えばサステナブルがテーマの展示だと、日本だと「サステナブルですよ。」で終わっちゃうんです。
でも、サステナブルでつくったものがどんなメッセージを持っているのか、
社会を変えるどんなパワーを持っているのか、ということを問いかけるのが「Dutch Design Week」です。

私たちが展示したのは、ダンボールにマグネット塗料を塗って突板を貼り、来場者にマグネットの目玉をつけてもらうというもの。
子供の頃に戻って遊んでもらおうという目論見です。
デザインはしかめっ面して見るものじゃなくて楽しむものだよと。
商品を売るのではなく、私たちの考え方を表した展示です。


Dutch Design Week 2024
画像提供:安多化粧合板


Dutch Design Week 2024
画像提供:安多化粧合板

安多社長:
子供が考えることはとてもキャッチーで天才的。
でも大人は眉間に皺を寄せてデザインを考えます。
デザインのおかげで逆に創造性を狭められているんですね。
ブースに来た難しい顔のデザイナーに目玉を「はい」って渡すと、貼った瞬間に笑顔になる。
手を動かした瞬間にデザイナーの役目って何だろうと気づいてくれるんです。

組art
目が落ちる!ハプニングも作る楽しさの一部

安多社長:
段ボールを使ったのは誰でも作れるからで、突板がなければ新聞紙を貼ってもいい。
身の回りのもので美しいものができるならば、誰でもアプローチできます。

誰でも簡単にお金をかけずに美しいものを作れるんだ、ということを広げていくことが
平等で格差のない社会にするために私たちが目指す「サステナビリティ」なんです。


デザインと聞くと「センスも知識も無いので…」と身構えてしまいがちですが、
改めて、実はもっともっと自由に楽しめるものだと感じました。

ワクワクしたり、癒されたり、ひき込まれたり。
自分自身の心が動く【組 art】を探してみたくなりました。

【安多化粧合板株式会社】
従来の銘木のイメージを払拭するような、個性的でデザイン性の高い突板化粧合板の製造メーカー。天然木が持つ素材の意匠性を活かしたものづくりを目指し、1枚1枚の木の木目をデザインとし、打ち合わせに基づいてそれらを貼り合わせていきます。そのデザインは世界で認められており、世界最大規模の国際家具見本市「ミラノサローネ」(イタリア)や、北ヨーロッパ最大のデザインの祭典「Dutch Design Week」(オランダ)にも出展しています。

大阪府八尾市太田新町7-163
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