オリジナル家具・金物の上手工作所

上手工作所のプロダクトを選んでいただいた方に話を聞く「問俱(とうぐ)」シリーズが始まります。

個性的でクセが強くて、おもしろい予感しかしない人たちに、あれこれ聞いてみる企画。
“一日一感動”を掲げる感動マニアの徳田が掘り下げていきます。

※問俱(とうぐ)とは
「具」には家具や道具の意味があり、「俱」は、にんべん=人+家具から成る文字。
「人と家具について問う」という意味をこめたタイトル。

初回のゲストは、エルメンドルフ久美子さん。
夫でカメラマンのスターリン・エルメンドルフさんと二人三脚で事務所を運営し、自らはその社長。
さらに京都・亀岡市で農業にも挑戦。
とにかく会うだけでパワーをもらえる!そんな素敵な方です。
エルメンドルフ久美子さんのプロフィール写真


徳田 今日はよろしくお願いします。
久美子さんみたいな面白い人が上手工作所のプロダクトを買ってはるんやって、
知ってもらいたいと思ってるんです。

久美子さん 私の面白さは、毒を吐く感じを理解してくれる人しかダメなんですよ。笑
大丈夫ですか?

徳田 そこがいいところじゃないですか!

会話ができなかったのにプロポーズに “Yes!!”

徳田 改めて、久美子さんは何をされてる方ですか?

久美子さん カメラマンの夫と写真事務所をやっていて、その経営と営業もしています。
主に建築とかインテリアの写真を撮ってます。

事務所を始めたのは2012年からで、結婚したのはその前年の2011年。
実は会話できなかったのに結婚したんですよ。

徳田 会話できなかったってどういうこと!?

久美子さん 私、英語が苦手で。
アメリカでスターリンにプロポーズされた時も、“Will you marry me?”って言われてたことがわからなくて。
‘marry’だけがわかって、「え、marry!? これ、結婚って言ってるんちゃうかな」と思って、
すぐに“Yes!!”って言いました。笑

徳田 単語だけわかって結婚したんですか!

久美子さん そうなんです!
で、その日に市役所に電話して「結婚の書類提出の予約したいんですけど」って。

徳田 それ、スターリンもスターリンやな。笑

久美子さん ですよね〜。
1週間後にいけますと言われたので、1週間後に結婚しました。

その頃は大阪で出張ヨガ先生をやってたんですけど、すごく賃金が安くて。
スターリンはもうプロとして建築写真を撮ってたんで、
それなら私がこの人をサポートした方が手っ取り早いかな、と。

都会生活から、オーガニック野菜を作るために亀岡へ

徳田 いや、面白いですね。

亀岡に移ってきたのは最近ですよね。
その前はドイツのベルリンにいたんですよね。なんで亀岡に来たんですか?
ベルリンにて、顔の肖像の前に立つ久美子さんとスターリン
ベルリンでの久美子さんとスターリンさん

久美子さん 亀岡に来て半年ですね。

場所探しの条件は、新幹線の”のぞみ”が止まる駅から30分以内のところで、
すごい田舎で、だけど交通の便が良い、だったんです。
いくつか候補地がありましたけど、亀岡はこれを全て満たしてましたね。

徳田 日本全国の建築写真を撮りに行かれるから、交通の便は大事ですよね。

久美子さん 30年、大都会にいたので、都会の暮らしに疲れてたのもあります。
実家を出て、まず広島駅の後ろに住んで、大阪に来て道頓堀川沿いに住んで、
東京では東京タワーの横に住んで、ベルリンではテレビ塔の横に住んでました。

徳田 亀岡に来て、畑もやってるんですよね。なんで畑を?

久美子さん コロナが始まった時、私は東京に住んでたんですけど、
テレビでトイレットペーパーが無いって流れると、1時間後にはお店からトイレットペーパーが全部無くなるんですよ。
何かちょっとしたことがあると、メディアから人がすごく影響を受ける街なんやと思って。
コロナもあって、東京は終わりにしようと思いました。
一度世界を見て、一番オープンな街に行って、自分をさらにオープンな人にしたいと。

オーガニック野菜にもはまってたので、「オーガニック野菜」と「動物福祉」が飛び抜けているところに行きたいと調べたら、ベルリンだったんです。
ドイツは国をあげてオーガニック野菜をやってるし、ミツバチを一匹でも殺したら罰金になるくらい動植物を大事にしてるんです。
それを感じたくて。

徳田 そういう経緯があってドイツだったんですね。何年いたんですか?

久美子さん 3年弱ですね。
その間、ドイツでは仕事は3件しかなかったです。笑
日本に出稼ぎして生活してました。

徳田 スターリンが日本に来るタイミングに合わせて現場が回ってた時期があったね。
インテリアデザイナーさんが「スターリンが日本に来る時に合わせて撮影しないといけないから、ここまでに絶対やってくれ!」って。笑

日本に帰国してた時の撮影風景。モデルは久美子さん
日本に帰国した時の撮影風景。モデルは久美子さん。

久美子さん ほんとにありがたかったです!
去年の夏、1ユーロ175円に上がった時に、もう日本に帰ろうと決めました。

ドイツにはオーガニックしか売ってない大きなスーパーがたくさんあるんです。
シャンプーも服もオーガニックで、価格も普通の商品くらいで簡単に買えました。
さて日本に帰ったらどうしようかと考えて、じゃあ自分で作ろうと。それで田舎に住むと決めたんです。

徳田 それで畑も!今の生活はどうですか?

久美子さん すごい気持ちいいです。
雑音がない生活って、こんなに気持ちがいいのかと。
バルコニーからカエルの鳴き声が聞こえるんです。
電気を消してそこで月を見たり。

孤独だったベルリン生活

久美子さん コロナ前、仕事のステップアップするぞーって東京に行ったんです。
スターリンが「久美ちゃん、もう疲れて仕事できないよ」って言ってたくらい仕事もあって。
事務所も一番儲かってた時に突然、コロナ禍が始まりました。

その前に思ってたんです。
今、仕事はうまくいってるけど、 お客様が振り込んでくれたお金に対してありがたいって気持ちが薄れてて、
ちょっと数字が変わったぐらいにしか思えなくなって。
それはたぶんこの生活に満足してないからやと思うって、スターリンに言ってたんです。
心に穴が空いてるみたいで、仕事があるのに嬉しくないって。

で、コロナ禍になって自分の人生のことを考えた時に、
東京じゃない、なんかすごい違うことをして 自分をもう一回イチからやり直したい。
生ぬるいところじゃなく、過酷なとこに身を置きたいってなったんです。

徳田 それでドイツ行ったんですね。

久美子さん そうです。そこでまた自分を発見できるんじゃないかと思って。

実際、東京の時とは全然違って、ドイツでは友達ゼロだったんですよ。
そしたら自分のことが見えてきて、自分は一体何をしたいんやろうみたいなことを考え始めるんです。

ベルリンの街角での演奏会。いろとりどりの傘が吊り下げられている風景
ベルリンでの撮影仕事風景

ベルリンで、ビオラを持つ女性を撮影するスターリンさん
ベルリンでの撮影風景

徳田 めっちゃいい経験ですね。孤独になるって。

久美子さん 徳田さん、今できないでしょう。
いきなり全部ほったらかしてドイツに行って、孤独になって一人で考えるって。

徳田 いや僕もできる立場になりつつあるけど、借金の返済があるから…

久美子さん でしょう。実際にしたら「社長何やってるんですか」ってなるでしょ。

徳田 いやでもまあまあそれはまた深い話やからまた今度…

兼業:ボンドガール

徳田 失礼ですけど、僕は勝手に久美子さんに「ボンドガール」というあだ名をつけさせてもらったんですよね。
人と人を繋げるとか、モノとコトを繋げたりすることがスゴイよね。

久美子さん 仕事を始めてからそうなったんですよ。
結婚してすぐ、私たちはすごい貧乏だったんです。
大阪で営業してた時、外国人と女ってことですごく馬鹿にされたんです。
「日本の建築はうまく撮れへんな」とか言われて。

でも中にはいい人もいて、いろんな方や出会いの場を紹介してくれて。
その時に紹介してもらった人たちで、今の私たちは食べていけてるんです。

徳田 その話を聞いて、スティーブ・ジョブズの話を思い出したわ。
ジョブズが高校の時に、有名だったコンピューター会社の社長に電話したら、コンピューターの魅力を普通に教えてくれた。

ほとんどの世の中の人は、自分が困ってることをなかなか聞けない。
でも聞いてみたら、特に大物になればなるほど自分ができることを探して教えてあげようとする。
だから聞きなさいっていうのがジョブズが言ってたことなんです。それを思い出した。

久美子さんは自分がしてもらったから余計に、自分にできることを探してくれるんですね。

久美子さん人にやってもらってよかったと思うことは、人にしたほうがいいって言われて。
私は今ある程度知ってる人が増えたから、この人たちが繋がったらええやんってそれだけなんです。
紹介しますわーってだけで、そこから先は自分たちで関係を作ってくださいみたいな。

徳田 その辺の雑草みたいなもんやね。
ギリギリの環境で育ったらめっちゃおいしいものが採れるっていうのを実践したんですね。

久美子さん あんな貧乏生活したことない。ほんま厳しかったです。