オリジナル家具・金物の上手工作所

個性的でクセが強くて、おもしろい予感しかしない人たちに、あれこれ聞いてみる企画。
“一日一感動”を掲げる感動マニアの弊社代表・徳田が掘り下げていきます。

※問俱(とうぐ)とは
「具」には家具や道具の意味があり、「俱」は、にんべん=人+家具から成る文字。
「人と家具について問う」という意味をこめたタイトル。


3回目のゲストは、空間デザイナーの中川 泰章さん(株式会社ムーラ 代表取締役)。
主に飲食店やショップのデザイン・設計を数多く手掛け、
上手工作所が運営する食の複合施設「JOZU+(ジョウズプラス)」もそのひとつです。
弊社代表・徳田とは約20年のお付き合い。
交わされる言葉の端々に、お互いへの信頼とリスペクトが溢れていました。


中川 泰章さん

真面目じゃないものを作るのが得意

徳田 中川さんとは、もう20年ぐらいの付き合いですね。
JOZU+の設計やデザインもお願いしました。
(上手工作所の)工場が東大阪にあった頃は、何かややこしいことがあるたびに来てましたね。

中川さん ややこしいことしか言わなかったですね(笑)。
木と鉄を同じ工場でやってるところは少ないと思います。当時は今以上に少なかったですね。
「木は木」「鉄は鉄」で、それぞれ違う工場に発注して、その整合性を取るのが工務店だったり僕たち設計なんです。
でも上手工作所は、(木と鉄を)一つの工場で作ってる。だからこそ、しっかり整合性が取れるんです。

徳田 中川さんが独立(※2015年)した時、事務所が『商店建築』誌に掲載されましたね。
街中のビルとビルの間に汚いコンテナをボーンと置いて、かなり衝撃だった。
やさぐれたコンテナがカフェと事務所でもあって。
今もたまに行きますが、どんどん格好よくなってます。

muura事務所
muura事務所/大阪市

muura事務所中庭

中川さん ずっと海の上で荷物を運び続けてたようなコンテナね。
経年でいい色になってくるというのもあるんですけど、一番大きいのは植物です。
中庭があって、そこに植えた植物たちが、年数が経つうちに残るものもあれば、枯れていくものもある。
色々なドラマを重ねて馴染んでいくんです。

徳田 中川さん、真面目じゃないものを作るのが得意ですね。ひねくれてるというか。

中川さん 普通じゃ面白くないと思ってるんですけど、徳田さんと仕事する時はより普通じゃないことを言ってると思います。
僕が図面を描いて「こんな感じです」ってお渡しするんですが、できあがってきたものが「それ、全然違うじゃないですか!」っていうこともあって(笑)。
悪い意味ではなく、いいアレンジをしてもらってるんですけどね。

徳田 僕は全然そう思ってなくて、「中川さんが求めてるのは何だろう。こうですか、ああですか」って考えてる。
個人的には中川さんの引き出しが見たいんですよ。

それに、中川さんは人を喜ばせるのがうまい!
「こんなのできました」と見せたら、「やばっ!めっちゃええですやん!」って言ってくれる。
だからうちのスタッフも「中川さんとの仕事は楽しい」と、いつも言っています。

中川さん 設計は図面を描くしかできなくて、実際に作ってもらってやっと形になります。
チームで一つのことに取り組むんです。
そのためには楽しいということが大事だと思います。楽しくないと面白くないですね。

徳田 代表作のひとつ、『タグボート大正』は何年くらいやってたんですか。

中川さん 4、5年くらいですね。
(大阪市)大正区のプロポーザル※で、運営会社と組んでやらせてもらったんです。
町工場の人たちと一緒に建物を作ろうということで、手すりや階段も全部、町工場の人たちと話をしながら作って。
時間はものすごくかかったけど、すごく面白かったです。
そこに徳田さんにも入ってもらって。
『作るが交わる』っていうコンセプトだったので、クリエイターや飲食店とか作るというジャンルの人たちがいろいろ混ざり合って、
化学反応を起こして、ひとつの面白いことをするという場所だったんですね。
大変でしたけど、面白かったですね。

※プロポーザル方式(企画競争入札):公共事業などで、価格だけでなく、提案内容や技術力などを基に事業者を選定する方式。
タグボート大正
タグボート大正/大阪市

JOZU+の内装には、木を使わないハズだった!?

徳田 その後に始まったのが、JOZU+ですね。
徳田雅代さん(※JOZU+代表)がまた情熱的な人で、「これが正解か」「他の可能性はないか」と常に問い続けてるような。
僕はそんな2人のやり取りをずっと間近に見てました。
で、2人が話してることと全然違うことを勝手にやったりしてましたね(笑)

中川さん 雅代さんと徳田さんって、話してることが微妙にずれてるんですよね。
悪い意味じゃなくて、それぞれにやりたい方向性がある。
そこを調整するのはとても面白かったですよ。
噛み合う部分もあるけど、正反対のことを言ってたり。
例えば雅代さんは、最初は内装に木を使わないで欲しいと言ってたんです。
でも徳田さんは逆に「木を使おう!木を使おう!」って(笑)。
どうしよう・・・となって最終的には、どさくさに紛れて木を入れた、みたいな感じでしたね。

徳田 そーっとね(笑)。
最終的にうまく収まって、面白いお店ができたと思います。

発酵料理 孚
JOZU+ 発酵料理 孚(ふう)

JOZU+エントランス
JOZU+ 坪庭

JOZU+裏庭
JOZU+裏庭

1本の柱に、もう一仕事も、ふた仕事も

中川さん 徳田さんに言われたことで一番印象に残ってるのが、「これ、仕事させてますか?」という言葉。
例えば1本の柱があるとして、柱としては役割を果たしてる。
でも他にも仕事できるやろ、って。照明つけるとか、棚板つけるとか。
そうすると柱がもう一仕事、ふた仕事できるようになる。

そう言われて、「うわーっ」となりました。
自分にはそんな考え方はなかった。
図面ではなかなか見えないけど、現場に行くと、「こうした方が面白くなるかも」と考えてみる。
『徳田イズム』という感じがします。

徳田 ありがとうございます。
僕、セコいんですよ(笑)。
例えば梅田に買い物で行くとして、ひとつの用事では行かないんです。
3つ4つ理由がないと行かない。

それは柱の話で言うと、目利きのベテラン職人が選んで薦めてくれた柱なら、やっぱり使ってみたいんです。
でもただ飾るだけでは意味がない。
役割や意味があってこそ、その材を使う価値が生まれるんです。

『ドロカベ研究所』で、循環できる仕組みを次の世代へ

徳田 最近始めようとしているプロジェクトがあるんですよね。

中川さん 『ドロカベ研究所』という活動を、サークルみたいな感じでやってます。
泥壁、いわゆる左官の仕事です。
土壁、漆喰、シラス壁、珪藻土、モルタルも。

僕自身、設計の仕事をしてますが、左官という仕事をちゃんと理解できていなかったんです。
左官にも種類がたくさんあって、そのひとつひとつが奥が深い。
例えば土壁だったら「この土地の土はこんな色になる」とか、「ここの土は固まり方がすごくいい」とか。そ
んなことをもっと知って、研究していきたいなあと。

徳田 これが、まあすごいんですよね。

中川さん 自然のものを使わせてもらっている立場で考えたいなと。
役目を終えた後は土に還るとか、形を変えて違うものに二次利用できるとか、そんなふうに考えたい。
役目を終えたら産業廃棄物に出して、焼却されて、では申し訳ないなと思って。

徳田 身の回りにあるものをもう1度築く、っていうのは良い試みですね。

中川さん 『左官教室』という雑誌を編集された小林澄夫さんの本で面白かったのが、 建築っていうのは「結ぶ」ということをやっていくんだと。
柱と梁を組むとか、屋根を架けるとか、紐で竹を結んで土をつける小舞(こまい)とか、組み合わせていくことが 建築の「結ぶ」という考え方なんです。「結ぶ」ができると「解く(ほどく)」もできる。
柱や梁をバラバラにして、また家を建てる時に持っていくことができる。
土壁も叩いて、バラバラ落ちた土をもう1回練り直したらまた使えて、解くことができる。
結んで、解いて、また結んで、ずっと循環していく。

「解体」は、『ほどく・からだ』と書きますが、現代の建築解体は、破壊の「壊」かと思うことがあって。
設計する者としては息苦しくなるというか、作ってもどうせ壊されるかもしれない、と感じてしまう。

僕らができることは、次の世代にもっとうまく使ってもらえるように、循環できる仕組みを残すことなのかな、と思ってます。
それが『ドロカベ研究所』でやりたいところでもあります。

千ふくのカウンター
千ふく/尼崎市(壁:西上弘規+ドロ壁研究所)

千ふく

徳田 木も同じです。解体した木をゴミにするのは最終手段で、できるだけゴミにしない使い方をしたい。
天板も建築材も。元工場を店舗にした現場では、処分が難しいスレート屋根も全部使いきろうと。
めんどくさいけどね(笑)。でも完成すると、その材料だから出せる雰囲気がある。
やって良かったと思うし、ゴミにしないことは立派な大義。土も同じかもしれませんね。

中川さん 市販の土壁や珪藻土にも、ケミカルなものや樹脂が入っていることもある。
だから自分で研究して、「この材料で壁を塗りたいので作ってください」とメーカーさんにお願いできるようになりたい。
自然に循環して、土に回帰する。
そんな素材を設計者同士で共有して、高めていきたいです。
ありがたいことに設計を任せてもらい、材料を選べる立場でもあるので、新しい試みを続けていきたいです。

徳田 面白いと思う人が大勢いると思います。
キレイに仕上げることは目標だけど、問題を無くすことばかりに意識が向いて、やらかす人がいなくなってる。

中川さん 以前、お客さんに「土壁は割れるしボロボロ落ちてきますよ」と話したら、「それも風合いでいいじゃない」と。
「割れたら金継ぎするのはどうですか」って言うと、すごく喜んでくれて。

欠点ではなくこうしたら面白いですよね、という感覚をお客さんと共有できたら、もっといいものができると思います。

徳田 楽しい話を聞けました。
また「やりよった!」って笑わせてくださいね。ありがとうございました。


photo:©スターリン エルメンドルフ

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