目利き歴50年の西岡氏が推奨する「銘木」の世界をシリーズでご紹介。
第2回目のテーマは「良質なチークとは? ミャンマーチークとインドネシアチークの違い」
チークは家具やフローリングなどの建材としても見かけることが多い材料、身近な銘木である「チーク」を掘り下げます。
西岡氏の紹介については >前回記事 第1回 銘木の世界「目利き歴50年の西岡氏について」をご参照ください。
ウォールナット、マホガニーと並んで世界三大銘木と呼ばれるチーク。
堅く頑丈な材質で耐久性に優れており、水や虫に強く海水に浸けても腐りにくいことから、船舶や建築などの材料としても広く使用されていました。
チークのテーブルとベンチ
緻密な木目と縞模様が良質なチークの特徴
東南アジアなどが原産、古い歴史を持つチーク
ミャンマーやインドネシアなど主に東南アジアの熱帯気候の地域に生育し、古い歴史を持つチーク。
東南アジアやインドではその腐食性や耐久性を活かし宮殿や寺院などの建設にチーク材が使われてきました。
京都府宇治市にある萬福寺には日本で唯一最大のチーク材を使った歴史的建造物があり、その迫力を近くで見ることができます。
アジアの建材や様式を用いて建てられた異国情緒あふれる萬福寺
チーク材を使った大雄宝殿の立派な方柱(1668年に建立)
良質なチークとは
チークには、天然物と植林物の2種類があります。
天然物を代表するのがミャンマー(ビルマ)産チーク。インドネシア産のチークは「ネシアチーク」と呼ばれ、全て植林で栽培されています。
上手工作所の製品として扱っているのは、西岡氏が監修して仕入れたミャンマー(ビルマ)チークのみ。
ミャンマー(ビルマ)チーク材は、色合いが濃く年輪が詰まっており、インドネシアチークはやや明るい色味であることが特徴です。
左がインドネシアチーク、右がミャンマーチーク
大変貴重な一枚板のミャンマーチークの天板(価格は約100万円)
高品質で高嶺の華となっているミャンマーチーク
ゆっくり時間をかけて成長するミャンマーチーク(天然のチーク)は品質の狂いが少なく寸法安定性・耐久性に優れています。
そして、資源保護のため伐採規定が設けられており、市場に出回る数が極めて少なく価格が高騰しているのが現状です。
特に一枚板で大きな天板となると、1ケタ見間違えたのかと思うほど高価なものになってしまいます。
少々の割れや節があったとしても、今は十分に高値で取引きがされています。
一方、植林されたインドネシアチークは成長スピードが早く木の密度が低くなるため、天然のチークと比べると、品質が劣ってしまいます。
安価なチークにはインドネシアチークをはじめ、植林によるチークが用いられることが多くなっています。
ミャンマーチークを手軽に届けたい
今や日本で出回る機会も減り、手が届きにくくなってしまったミャンマーチークですが、
良い材料を提供したいと考えている上手工作所では様々な工夫をしながら商品化をしています。
「接ぎ(はぎ)合わせ」でまるで一枚板のように美しく
1枚板では、価格が高騰しすぎてしまった材料も細長い材料であればコストを抑えられます。
細長い材料を接ぎ合わせの技法で組み合わせ、まるで1枚板のように違和感なく美しく仕上げます。
色味や木目の近いもの同士を組み合わせることがコツです。
手間ひまがかかりますが、コストを抑え理想のサイズの天板をつくることができます。
接ぎ合わせ加工の製作風景
接ぎ合わせ加工で完成した天板
ミャンマーチークの特性を活かしたプロダクト
現代でも、ミャンマーの林業を支えているのはゾウ。
製材時にゾウが引いて運んだ凹みキズがある材料などは素材そのままの形状を活かしたプロダクトとして販売しています。
水に強いという特性を生かし屋外でも使えるドアハンドルに加工。
チークは木製タールという天然の油分を含んでいます。この天然のオイルが水を弾くので、船の甲板などで使用されていました。
そのチーク本来の特性を活かし、過度な塗装はせずオイルで仕上げています。
時とともにオールドチークへとなっていく素材の変化をお楽しみください。
製材時にゾウが引いて運んだ凹みキズ
材料の歴史や物語を感じます
木製ドアハンドル スクエア(真鍮)
金物も経年変化が楽しめる無垢の真鍮
世界中で人気の高いミャンマーチークは昨今は特に流通の機会が少なくなり、入手することが難しくなってきています。
今後もいつまで提供できるかどうか難しい材料ではありますが、可能な限り商品を作り続けたいと思っています。
チークを使ったアイテムは下記をご参照ください。